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WEAR SPACEがクラウドファンディングを選んだ理由


ハードウェアの開発にはさまざまな手法がありますが、今回WEAR SPACEが選んだのは製品の概要や試作品を発表し、共感いただいた方の支援を受けて製品の開発に進む「クラウドファンディング」という手法です。

おかげさまでプロジェクトは国内外で話題にしていただいた一方、クラウドファンディングについてご質問をいただくことも多く、今回のプロジェクトで最も重要な要素と言えるクラウドファンディングの取り組みについてご紹介したいと思います。

周囲の“ノイズ”を徹底的に遮断! 一瞬で集中できる空間を作り出すウェアラブル端末「WEAR SPACE」 | GREEN FUNDING by T-SITE
https://greenfunding.jp/lab/projects/2463

なぜクラウドファンディングなのか

FUTURE LIFE FACTORYがパナソニックのデザインスタジオということもあり、「なぜクラウドファンディングをするのか」「普通に量産して販売すればいいのでは」というご意見もたびたびいただきました。もちろん、クラウドファンディングを使わずに量産して一般販売、という手法も選択肢としてはあったのですが、今回クラウドファンディングを選んだ理由は「受容性の評価」にあります。

受容性の評価というとわかりにくいかもしれませんが、要は「一般の方がお金を出して実際に欲しいと思ってもらえるか」を把握できるということ。WEAR SPACEが出展した国内外さまざまなイベントでは高い評価をいただきましたが、それが必ず販売につながるわけではありませんし、どれくらいの人数に向けて作ればいいかということもわかりません。

一般的な製品であれば実際の販売に向けてさまざまな調査や検討を行ない、その上で価格や数量を決めて販売を決定するわけですが、そこまでには大変な時間と労力がかかります。また、市場調査に基づいて販売計画を決めたからといってそれが必ず売れる保証となるわけではありません。

その点、クラウドファンディングは、「アンケートで欲しいと言ってくれた人数」の数ではなく、「実際にお金を出して欲しいと思ってくれた人数」を把握することができます。一般販売に比べると決済手段も限られ、製品もすぐに手元に届くわけではないにもかかわらず、実際にお金を支払って製品を支援していただける方々は、市場調査やアンケートだけでは測ることができない、非常に重要な存在なのです。

そして受容性評価におけるクラウドファンディングのメリットは「失敗したら中止」という判断ができることです。一般販売の場合、生産数量は少なくとも数百から数千単位となり、生産に必要な部品に加えて製品設計の人件費なども含めるとその金額は非常に大きなものとなります。一方、クラウドファンディングであれば目標に達しなかったことは残念ではあるものの、「量産したはいいが全然売れなかった」という事態を未然に防ぐことができます。

もちろん、一般販売なら量販店でも販売できますし、請求書ベースの法人販売もできるので、クラウドファンディングではなく一般販売していれば売れたかもしれない、という可能性もゼロではありません。とはいえ、作るためのコストはもちろん、その後在庫を抱えることにもコストが発生するハードウェアにとって、事前に受容性評価を行なえるクラウドファンディングは非常に魅力ある手法であり、市場に同様の製品が存在しないため市場調査も難しいWEAR SPACEには適した製品開発の手法、と言うことができます。

クラウドファンディングに「GREEN FUNDING」を選んだ理由

クラウドファンディングのプラットフォームはいくつもありますが、WEAR SPACEでは国内向けにサービスを展開している事業者のうち、「GREEN FUNDING」を使ってクラウドファンディングを実施しました。

GREEN FUNDING by T-SITE – クラウドファンディング
https://greenfunding.jp/

国内のクラウドファンディングでは「Makuake」「CAMPFIRE」など他にも有名なサービスがあり、これらサービスは知名度も高いことから「なぜGREEN FUNDINGなの?」という質問をいただくことも よくいただきましたので、この場を借りてGREEN FUNDINGを選んだ理由もご紹介しておきます。

まずはクラウドファンディングのプラットフォームを選ぶための事前調査として、対象サービスの属性を調査しました。以下は国内クラウドファンディングのうち大手であるMakuake、CAMPFIREの支援金額ベスト5を並べたものです。製品価格は目安として対象の製品が最も安価に手に入る価格としました。なお、内容はあくまで独自調べであり、製品価格についてもざっくりと選んでいるのであくまで目安としてお読み下さい。

Makuake

CAMPFIRE

あくまで上位5つではあるものの、Makuakeはガジェットや電化製品が多く、一方のCAMPFIREはゲームやアニメなどのコンテンツが多い、というイメージが見て取れます。上記データはベスト5までですが、実際には数十位くらいまで調べており、上位とほぼ同等の傾向が見られました。

一方、今回利用したGREEN FUNINGの上位ベスト5がこちらです。

GREEN FUNDING

金額だけで見るとMakuake、CAMPFIREよりも下がるものの、ベスト5までは2,000万円以上の金額を集めており、支援人数も1,000人を超えています。また、注目すべきは上位5つのうち4つが音楽を聴く製品であること。WEAR SPACEはあくまで集中力を高めるための製品ですが、ノイズキャンセリングヘッドフォンやBluetoothによるワイヤレス音楽再生など音楽を楽しむ要素も備えており、WEAR SPACEのターゲットと近そうです。

そこで今度はMakuakeとGREEN FUNDINGで、音楽を聴くことに関連した製品をピックアップし、上位5つを並べてみました。

なお、MakuakeについてはXPUMPがイヤフォンやスピーカーに比べるとジャンルが異なるため、上位6つまでをカウントしています。また、すでにクラウドファンディングが終了して製品販売に移行しているプロジェクトや他のプラットフォームでクラウドファンディングを行なっていたプロジェクトなどもあるため、こちらもあくまでイメージをつかむための参考としてご理解下さい。

GREEN FUNDING

Makuake

音楽関連に絞って見ると、達成金額の差がぐっと縮まりました。あくまで一部のサンプルのみなのでこれですべてを判断できるわけではありませんが、Makuakeは規模も大きくプロジェクト数も非常に多いことも含めて考えると、音楽関連の製品をクラウドファンディングするためのプラットフォームとしてGREEN FUNDINGは十分な実績がある、と考えられそうです。

こうした実績以外に、GREEN FUNDINGがCCCグループというのも大きな要因でした。CCCグループと言えば代表的な存在がTSUTAYAですが、現在はそのグループ力を活かして新宿の「TSUTAYA BOOK APARTMENT」でクラウドファンディング期間終了までWEAR SPACEのプロトタイプを展示しています。さらに同じCCCグループにはイヤホン・ヘッドホン専門店「e イヤホン」もあり、11月17日にはe イヤフォンの秋葉原店でWEAR SPACEの体験会を開催するなど、リアル店舗でのプロモーションが可能な点もGREEN FUNDINGを選んだ決め手でした。

クラウドファンディングを実施するために必要なこと

クラウドファンディングのプラットフォームが決まったらいよいよプロジェクトの準備。クラウドファンディングのプロジェクトで大事なのは大きく2つ。1つは動画やテキスト、写真といったWebコンテンツ、そしてもう1つは支援者に対するリターンの設定です。

Webコンテンツのうち最も作業に時間がかかるのが動画制作ですが、こちらは先頃日本テレビとの提携でも話題になった動画メディア「bouncy」を運営するViibarさんにお願いしました。非常にタイトなスケジュールにもかかわらず制作していただいた動画は国内だけでなく海外でも話題になり、今では約5万近い再生回数になっています。

制作が大変な動画ですが、逆に言えば動画ができてしまえばあとはずいぶん楽になります。というのも動画の場合、ストーリーや製品の見せ方、キャッチフレーズなどをしっかり考えなければいけないため、結果として動画のために作った文言や画像がそのままWebで利用できるからです。

今回もプロモーションムービーの中から印象的なシーンをそのまま静止画として活用しつつ、テキストのキャッチコピーなども動画で考えた内容をベースに作成しました。作業効率を上げるという点でもまずは動画の制作に注力することをお勧めします。

「手数料」だけでは終わらないクラウドファンディングの費用

もう1つのリターン設定、こちらはクラウドファンディングの鍵を握ると言っても差し支えない存在です。

クラウドファンディングのリターンもさまざまありますが、ハードウェアの場合は「ハードウェア1台をお送りします」が基本です。映画やイベント、アーティストなどの場合は応援だけが目的の支援もありますが、ハードウェアの場合は「製品の開発を応援したい」というよりも「この製品なら欲しい」というニーズのほうが強いため、1人1台のリターンが必要になります。

リターンの設計というとむずかしそうに思えるかもしれませんが、基本は単純な足し算や引き算、かけ算だけで構成できます。まずはハードの原価を試算し、原価を元に一般販売する価格を設定。そこからクラウドファンディングに必要な諸経費を引いた額がリターンの原型となります。

諸経費と一言で言いましたが、クラウドファンディングにはさまざまな諸経費があります。プロモーション費用やクラウドファンディング運営に関する諸経費はいったん別にして考えたとしても、まずはクラウドファンディングのプラットフォーム手数料がサービスによって10~20%程度必要です。

このほか、地味に大変なのが消費税です。ほとんどのクラウドファンディングは税込金額で表示されていますが、本来なら税別で設定しているハードウェアの価格も、クラウドファンディングでは税込で表記しなければいけません。また、送料も別設定することができないので、全国一律であらかじめ含んでおく必要があります。

例えば税別1万円で一般販売予定の製品を20%手数料のクラウドファンディングで実施する場合、

  • 手数料(2,000円)
  • 消費税相当額(10,000円で一般販売したとして800円)
  • 送料(全国一律想定で1,000円)

と考えると、1万円のうち約4割近い3,800円が諸経費として引かれる計算になります。

実際には製品の価格が上がれば相対的に送料の比率は下がりますし、送料も法人だともっと安価な料金体系もありますので必ずしもここまで高い比率ではありませんが、クラウドファンディングを検討している方であれば、プラットフォームの手数料だけでは終わらないことは覚えておくことをお勧めします。

さらにここからクラウドファンディングを支援してくれる人向けの早期割引などを設定していくと、1台あたりの利益はさらに下がります。上記の例で1,000円を早期特典として値引きした場合、一般販売時の定価に比べて約半額で販売しているのと同じくらいの利益率ということになります。計算式自体はとても単純ながら、比率をどう調整するかがクラウドファンディングの難しさであり、醍醐味でもあると言えるでしょう。

長くなりましたがここまででクラウドファンディングの準備が整いました。クラウドファンディングの開始、そしてその後の状況については、また改めてご紹介したいと思います。